医療保険は必要?不要?

2018年6月16日

新聞や雑誌の記事等で医療保険やがん保険には加入する必要は無いという特集が掲載されることがあります。

実際に掛かる医療費を考慮すると、保険会社が販売しているような医療保険等は必要無く、貯蓄があれば大丈夫という論法です。

本当にそうでしょうか?

今回は、医療保険を不要、必要の両方の観点から考えてみたいと思います。

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1.医療保険は不要?

まずは、医療保険は不要と考えられる根拠からご紹介します。

 

1)高額療養費制度

最初に日本の手厚い公的保障制度について確認しておきたいと思います。

日本は国民皆保険制度であり、原則として誰もが何かしらの公的医療保険制度に加入しています。通常、診療所や病院等の窓口で支払う医療費は下記の通り、3割が自己負担分となっています。
※医療費の自己負担割合は、年齢・収入等によって異なります。

医療費(総額)= 自己負担(3割)+ 健康保険(7割)

更に、自己負担に関しても青天井ではなく、何度も治療を受けた場合、高額療養費制度によって負担の上限が決まっています。

自己負担限度額は年齢や収入によって異なりますが、医療機関や薬局の窓口で支払った額が暦月(月の初めから終わりまで)で限度額を超えた場合には、高額療養費制度によって、その超えた額が支給されます。

高額療養費制度についての詳細は、下記記事をご参照ください。
医療保険は不要!?高額療養費について理解しておくべきポイント

医療費が心配だから医療保険に加入するという事であれば、医療費の自己負担額には上限があるため、ある程度の貯蓄があれば、医療保険は不要とも考えられます。

 

2)傷病手当金

高額療養費制度とともに、傷病手当金という手厚い保障制度もあります。

傷病手当金とは、健康保険の被保険者が病気やケガの療養中に収入が下がった場合、被保険者とその家族の生活を保障するための制度です。被保険者が業務外の事由による病気やケガのために会社を休み、休業中に給与が支払われない場合や給与が下がった場合に支給されます。

傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が、最長1年6ヶ月間支給されます。

但し、傷病手当金はサラリーマンの方が加入する組合管掌の健康保険や全国健康保険協会(略称、協会けんぽ)が運営する健康保険の被保険者に支給される制度です。自営業者等が加入する国民健康保険には傷病手当金の制度はありますが、任意給付であり、支給している市町村はほとんどないようです。

傷病手当金についての詳細は、下記記事をご参照ください。
医療保険は不要!?傷病手当金について理解しておくべきポイント

 

傷病手当金は業務外の病気やケガに対する制度ですが、業務上や通勤途上での事故によるケガ等は健康保険ではなく、労働者災害補償保険(労災)で補償されます。労災の補償にも休業(補償)給付があります。

医療費の心配とともに、病気やケガで働けない間の収入減少も心配だと思いますが、サラリーマンの方に関しては、傷病手当金という制度があるため、ある程度の貯蓄があれば、医療保険は不要とも考えられます。

 

3)入院は短期化

次に、最近の医療事情を確認したとい思います。

医療保険等のパンフレットには入院による療養は短期化の傾向があるという情報が掲載されています。厚生労働省の調査によると、実際に平均入院日数は減少傾向にあり、入院日数5日以内の割合は増加傾向にあります。

仮に平成25年の平均入院日数である17日間、入院したとしても、医療保険から給付される金額は、入院給付金日額が1万円だとすると、17万円です。これに手術給付金が10万円追加で支払われたとして、合計で27万円です。

ある保険会社の医療保険は、入院給付金日額1万円(60日限度)、30歳(男性)で月額保険料は4,135円です。これを男性の平均寿命の80歳まで払い続けたとすると、保険料総額は、2,481,000円です。この保険料を貯蓄していれば、上記の例で考えると、約9回の入院に対応できます。

一生涯に17日間の入院を9回もする可能性はどれくらい高いでしょうか?

また、保険とは本来、自動車事故のように貯蓄等では到底対応ができない損害を被る可能性がある場合に、そのリスクを転嫁するものであり、上記例のような程度の金額であれば、保険はそもそも必要ないとも言えます。

支払われる保険金・給付金が総支払保険料を下回る可能性が高いのであれば、貯蓄で備える方が得策ではないでしょうか。

但し、がんに関しては、先進医療や抗がん剤治療、放射線治療等を含め、医療費等が高額になる可能性があります。高額になる可能性がある治療費に対して、がん保険は、まとまった額の診断給付金や入院給付金が無制限に支払われる等の特長があるので、保険としての役割が果たされると言えるでしょう。

 

4)貯蓄で備えるか、保険で備えるか

さて、病気やケガの際の医療費や収入減少に対して、保険で備える場合、多くの医療保険が掛け捨てですので、病気やケガによる入院や手術等が発生しなかった場合、何も手元に残りません。

しかし、貯蓄で備える場合には、仮に病気やケガによる入院や手術等が発生しなかった場合には、別の用途として活用することが可能です。病気やケガによる入院では、必ずしも保険でないと対応できないような大きいな損害が発生する確率は低いと考えられますので、そのような場合には、貯蓄で備えるのも1つの方法です。

但し、この長所は短所にもなり、貯蓄で備えた場合には、他の用途で使ってしまう可能性があり、その点はには注意が必要です。

 

 

 

2.医療保険は必要?

次に医療保険は必要と考えられる根拠をご紹介します。

 

1)差額ベット代

入院する際に個室等に入ると、原則として差額ベット代を請求されることになります。

下記の4つの条件を満たした病室であれば、病院は差額ベット代を請求でます。
1.病室の病床数は4床以下であること。
2.病室の面積は一人当たり6.4平方メートル以上であること。
3.病床のプライバシーを確保するための設備があること。
4.少なくとも「個人用の私物の収納設備」、「個人用の照明」、「小机等及び椅子」の設備があること。

但し、下記のような場合には、差額ベット代を請求できないことになっています。
① 同意書による同意の確認を行っていない場合
② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
③ 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合

 

差額ベット代は、上記の高額療養費制度の対象にはなりませんので、全額自己負担となります。

大部屋だと周りの人が気になるからどうしても個室に入院したいという場合や経営者の方等で入院中も他人に邪魔されず仕事がしたいという場合は差額ベット代を払って個室に入院する必要が発生します。

そのような場合には、差額ベット代の出費に備えて医療保険に加入しておいた方が安心です。

 

差額ベット代に関する詳細については、下記記事をご参照ください。
差額ベット代の意味を正しく理解していますか?

 

2)貯蓄が減るストレスに耐えらるか?

高額療養費や傷病手当金があるので、ある程度の貯蓄があれば、医療保険が不要という論理はご理解頂けると思います。しかし、論理的には正しいとは思いますが、実際に自分が病気やケガで入院することになった場合に、貯蓄が減るストレスは相当なものだと思います。

感情的にそのストレスに耐えらえるかも考えておいた方がいいでしょう。そのようなストレスを病気やケガの療養中に感じるくらいだったら、医療保険等に加入しておくのも1つの選択肢だと考える方もいるでしょう。

保険は医療費を賄うことだけが役目ではなく、精神的な面をカバーするという役目もあると思います。病気になると、精神的に非常にナーバスになると思います。そのような時に貯蓄だけで安心でしょうか?

病気の経過が心配な時に更に治療費が貯蓄だけで足りるだろうかという心配まで重なると非常に辛い状態になると思います。

保険に加入していれば、少なくとも金銭面の精神的な不安は和らぐと思います。

また、病気になった時に必要な費用は治療費だけではありません。入院するとなれば、家族がお見舞いのために病院に行く費用等も掛かるでしょう。そのような費用も保険でカバーすることが出来ます。

医療費という局所的な部分のみにスポットをあてず、総合的に考えて自分には保険が必要かを考えてみることも重要だと思います。

 

3)本当に貯蓄できるのか?

貯蓄をすれば、医療保険は不要とは理解できても、実際には貯蓄ができないという方もいらっしゃいます。また、医療費用に貯蓄をしても、教育費等でどうしても必要になった場合、使ってしまう可能性もあります。

人間は機械ではなく感情もありますから、論理的には正しいと理解していても、反対の事をしてしまうこともあります。

貯蓄が苦手という方に関しては、強制的に保険料が引き落とされる医療保険に加入するというのも1つの考え方です。

 

4)手厚い公的保障制度が継続するか?

医療保険が不要と考えられる大きな理由に日本の手厚い公的保障制度があります。しかし、その健康保険制度も未来永劫、存続する保証はどこにもありません。

少子高齢化が進む中、日本の医療費が大きく膨れ上がっているニュースは頻繁に報道されています。健康保険制度そのものは無くならないとしても、医療費の自己負担額が引き上げられたり、高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられたりする可能性は十分に考えられます。

そうなると、医療保険の必要性が増してくるのは間違いありません。

今後の社会保険制度の変化については、常に確認しておく必要があるでしょう。

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3.医療保険が必要な人は?

上記の通り、医療保険が必要と思われる観点と、不要と思われる観点を確認してきましたが、結局、下記のような方は医療保険が必要と考えられます。

 

1)自営業者(個人事業主)

自営業者(個人事業主)の方は、国民健康保険に加入しているので、傷病手当金がありません。よって、医療保険が働けない間の収入を補てんするような形で活用できます。

しかし、医療保険は原則、入院が給付の条件ですが、損害保険の所得補償保険であれば、入院は条件ではなく、自宅療養でも保険金が支払われる可能性があるので、収入の減少に備えるのであれば、所得補償保険の方が適しているかもしれません。

 

2)貯蓄がない方

貯蓄がない方についても医療保険の必要性は高くなります。高額療養費制度や傷病手当金があっても自己負担は発生する可能性があります。

貯蓄がない場合には、医療保険に加入し、その間に貯蓄する。そしてある程度の貯蓄が準備できたら、医療保険を解約するというのも1つの方法です。

 

3)貯蓄ができない体質の方

どうしても貯蓄が苦手という方もいらっしゃると思います。そのような方は、強制的に口座から保険料が引き落とされる医療保険に加入した方がいいでしょう。

 

 

 

4.加入するなら長期入院に対応するプラン

医療保険に加入するのであれば、1入院の支払日数を長期で対応できる商品に加入する方がいいでしょう。何故なら60日型の商品では、保険本来の目的である、貯蓄では対応できないような大きな損害には備えられないからです。

 

【試算条件(平成27年10月現在)】
保険期間:終身
払込期間:終身
被保険者:30歳(男性)
入院給付金日額:1万円(60日型)

月額保険料:4,135円

上記の医療保険を120日型にしても月額保険料は倍にはならず、月額保険料4,455円と約300円高くなるだけです。

保険の本質である貯蓄等で対応できないような大きな損害に備えるという意味では、120日間という長期の入院の可能性に備える方が保険本来の趣旨に合っていることになります。

また、三大疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)で入院した場合には、日数無制限で保障される特約もありますので、ご検討ください。

 

 

 

まとめ

結論としては、現在の手厚い公的医療保険制度に加入しているサラリーマンの方には医療保険は限りなく不要に近い保険だと考えられます。貯蓄のない間は、安い定期の医療保険や都道府県民共済等に加入して備え、貯蓄ができれば、解約したり、満期が来た際に更新しないという対応でいいのではないかと思います。

医療保険に加入していないと、どうしても不安だと思われる方もいらっしゃると思います。そのような方は、長期入院に備える商品を検討されてはいかがでしょうか。

但し、他人が医療保険に加入しているから自分も加入するという日本人的な発想は間違いだといえます。そういう営業トークに騙されないにしてください。ご自分の加入している公的医療保険制度や貯蓄等の状況を考えて、医療保険の加入を検討して頂ければと思います。

最終更新日:2017年11月20日
No.100

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