「相続放棄」と「相続分の放棄」を比較|手続方法や効果の違いとは?

2018年11月12日

亡くなった方(被相続人)の財産を相続する際の「相続放棄」と「相続分の放棄」の意味の違いをご存知でしょうか?

実は、多くの方が「相続放棄」と「相続分の放棄」を混同していると思われます。「相続放棄」したつもりが「相続分の放棄」をしていたということになると、後々トラブルに巻き込まれる可能性があります。

今回は、「相続放棄」と「相続分の放棄」の手続方法や効果の違いと、相続時に2つを混同した場合にどのような問題が発生するかをご紹介したいと思います。

また、「相続放棄」や「相続分の放棄」時の生命保険活用法についても解説します。

スポンサーリンク

1.3種類の相続方法

相続とは、亡くなった被相続人の一切の権利義務を相続人が引き継ぐことです。一切というところがポイントで、亡くなった方の財産が全て現金や土地等のプラスの財産であれば、問題はありませんが、借金等のマイナスの財産もある場合があります。相続するということは、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も全て引き継ぐことになります。

相続時にプラスの財産が多ければいいですが、マイナスの財産の方が多いという場合も当然あります。

そこで、相続の際には民法上、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類の方法が用意されています。

 

1)単純承認

単純承認は限定承認や相続放棄と違い、手続きが不要です。被相続人(亡くなった方)の「プラスの財産」も「マイナスの財産」も無条件に相続することになります。但し、下記のような場合にも単純承認したとみなされますので注意が必要です。

  1. 限定承認や相続放棄を選択する前に被相続人(亡くなった方)の財産の全部または一部を処分した場合
  2. 限定承認や相続放棄を選択した後に被相続人(亡くなった方)の財産の全部また一部を隠ぺい、消費などした場合
  3. 限定承認や相続放棄の手続きをせず、3ヶ月の熟慮期間を経過した場合

 

2)限定承認

「プラスの財産」の範囲内で「マイナスの財産」を引き継ぐことを限定承認といいます。「プラスの財産」を超える「マイナスの財産」については、責任を負う必要がなくなります。限定承認をするには次のような手続きが必要です。

  1. 相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る
  2. 相続人全員で家庭裁判所に限定承認する旨を申し出る

 

3)相続放棄

被相続人の財産について「プラスの財産」も「マイナスの財産」も一切引き継がない意思表示相続放棄といいます。相続放棄した場合は、初めから相続人でなかったとみなされます。したがって、相続放棄した場合には代襲相続は発生しません。

相続放棄の要件は下記の通りです。

  1. 相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る。
  2. 各相続人が単独で放棄できる。

尚、相続放棄の意思表示は相続開始前に行うことはできません。

 

 

 

2.「相続分の放棄」とは?|「相続放棄」との違い

上記の通り、「相続放棄」するには、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。

一方、「相続分の放棄」とは、相続人間で行う遺産分割協議の際に自分の相続分を相続しないという選択をすることです。裁判所に申し出るなどの特別な手続きは不要です。

この場合、自身の相続分は放棄していますが、「相続放棄」は行っていないということになります。しかし、多くの方は「相続分を放棄」したということを「相続放棄」と同じことだと思ってしまいます。

スポンサーリンク

 

 

 

3.「相続分の放棄」の問題点

では、実際「相続分の放棄」にはどのような問題があるのでしょうか?

実は、「相続分の放棄」はプラスの財産を相続しないという意思表示をすることになりますが、「相続分の放棄」をしてもマイナスの財産である借金等の債務を免れることはできません

どういう意味かというと、被相続人(亡くなった方)に借金があった場合、法定相続分と異なる割合で遺産分割協議を行ったとしても、借金等の債務に関しては原則、法定相続分で引き継ぐことになります。

例えば、父親が借金を残して亡くなったとします。相続人は子供2人で、子供Aが父親のプラスの財産を全て相続するから銀行からの借金も全て引継ぐという遺産分割協議を子供Bと行ったとします。この遺産分割協議自体は何ら問題はありませんし、子供AB間では有効ですが、債権者である銀行に対抗することはできません。

債権者である銀行が子供Aが全ての債務(借金)を引き受けることを同意(免責的債務引受)していなければ、プラスの財産は子供Aが引き継ぐことになっても借金については、子供Aと子供Bで法定相続分通り半分ずつ引継ぐことになります。

この場合、子供Aが父親の借金を返済していれば問題は発生しないと思われますが、子供Aが借金を返せなくなれば、銀行は、子供Bにも返済を迫ってきます。

そこで子供Bが「私は相続放棄をした」と主張しても、それは、「相続分の放棄」であって、「相続放棄」ではありませんので、父親の借金の半分については返済義務が発生してしまいます。

一方、「相続放棄」していれば、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないという意思表示をすることになるので、借金についても返済する義務はありません

相続放棄した際に発生し得る問題点に関しては、下記記事をご参照ください。
相続放棄をした場合に発生し得る問題点とは?

 

 

 

4.「相続放棄」や「相続分の放棄」時の生命保険活用法

生命保険の死亡保険金は『一時払い終身保険の活用法』でもご紹介しましたが、民法上の相続財産ではないとされています。

よって、死亡保険金受取人が上記の「相続放棄」を行っても、「相続分の放棄」を行ってもどちらでも保険金を受け取ることが可能です。

また、死亡保険金は、遺産分割対象となる相続財産には含まれませんので、遺産を残したい方に保険金分の財産を確実に渡すことができます。

被相続人に借金がある場合等でどうしても財産を遺したい方がいる場合には、生命保険の活用は有効です。

 

 

 

まとめ

「相続放棄」と「相続分の放棄」、言葉を聞くだけでは、同じ意味のように感じますが、どちらを選択するかで実際には大きな違いが発生します。

「相続分の放棄」を考えているのであれば、後々のトラブルを避けるためにも「相続放棄」も検討した方がいいでしょう。

今回の記事内容を参考に、「相続放棄」を行うのか、「相続分の放棄」を行うのかを決めていただければと思います。

最終更新日:2018年11月12日
No.280

スポンサーリンク