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国民年金

国民年金の受給要件が10年に短縮化

国民年金の老齢基礎年金の支給要件をご存知でしょうか?何年間、国民年金の保険料を支払えば、老齢基礎年金を受け取る権利が発生するのでしょうか?

今回は、老齢年金の受給要件が短縮化されたことについて解説します。受給要件の短縮化のメリット、デメリットについてご理解頂ければと思います。

1.国民年金(老齢基礎年金)の支給要件

以前、国民年金の老齢基礎年金を受給するためには、受給資格期間(保険料納付済期間と保険料免除期間などの合計)が25年(300ヶ月)以上であることが必要でした。しかし、現在は受給要件が短縮化され、受給資格期間(保険料納付済期間と保険料免除期間などの合計)が10年(120ヶ月)以上あれば、老齢基礎年金を受け取ることができます。

原則、20歳から60歳まで40年(480ヶ月)間保険料を支払うと、満額の老齢基礎年金が受け取れます。満額の老齢基礎年金は、779,300円(平成29年度)です。

※受給資格期間とは?
・国民年金の保険料を納めた期間や、免除された期間
・サラリーマンの期間(船員保険を含む厚生年金保険や共済組合等の加入期間)
・年金制度に加入していなくても資格期間に加えることができる期間(「カラ期間」と呼ばれる合算対象期間)

 

 

 

2.厚生年金(老齢厚生年金)の支給要件

厚生年金の老齢厚生年金を受け取るためには、老齢基礎年金の支給要件を満たしたうえで、厚生年金の被保険者期間が1ヶ月以上あることが必要です。老齢厚生年金を受け取るためには、国民年金と厚生年金を合わせて、保険料を10年間以上支払っていることが必要です。

サラリーマンの方であれば、一般的に高校や大学を卒業してから約40年間企業に勤務することになります。約40年の勤務期間に厚生年金の保険料を支払うことになります。

厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれていますので、厚生年金の支給要件を満たしつつ、国民年金の支給要件も満たすことになります。よって、国民年金からは老齢基礎年金が支払われ、厚生年金から老齢厚生年金が支払われます。

 

 

 

3.支給要件の短縮化

上記の通り以前は、受給資格期間が25年(300ヶ月)以上であることが老齢年金受給の要件になっていましたが、年金の受給資格を得るために必要な受給資格期間を25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が2016年12月16日の参院本会議で、全会一致で可決、成立しました。

2015年10月に予定されていた消費税の10%引き上げに合わせて受給資格期間の要件を25年間から10年間に短縮する予定でしたが、増税延期に伴い先延ばしされていました。

2016年12月の法案成立で、平成29年8月1日から、資格期間が10年以上あれば老齢年金の受け取りが可能になりました。

受給資格期間の納付要件が25年から10年に短縮されたことにより、新たに60万人超の方が老齢年金を受給できるようになる見通しです。

今回の短縮化で年金を受け取れるようになる方に関しては、日本年金機構より以下の黄色の封筒(年金請求書(短縮用))が送付されてきます。老齢年金を受給するには年金事務所などの窓口に年金請求書(短縮用)を提出する手続きが必要ですので、ご注意ください。
日本年金機構より送付される黄色の封筒

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4.支給要件を10年に短縮化はメリットだけか?

受給資格期間の要件が25年から10年に短縮されることにより、新たに60万人超の方が老齢年金を受給できるようになると聞くと、素晴らしいことのように聞こえますが、実は問題点もあります。

前述の通り、現在の老齢基礎年金は20歳~60歳の40年間保険料を納付した場合に満額支給されますが、支給されるのは年間779,300円(平成29年度)です。

しかし、受給資格期間の要件が10年に短縮されるといっても、10年間保険料を納めたからといって満額の年金を受け取れるわけではありません。老齢基礎年金の支給額は保険料を納めた期間に応じた額になります。保険料納付期間が40年に満たない場合は加入可能月数に対する保険料納付月数の割合で減額されます。

例えば、40年(480ヶ月)加入が可能だった方の保険料納付期間が10年(120ヶ月)間の場合、下記算式で減額されます。

779,300円 × 120ヶ月/480ヶ月 = 194,825円(平成29年度)

この方が受け取れる老齢基礎年金は月額約1万6千円です。

一方、40年(480ヶ月)加入が可能だった方の保険料納付期間が25年(300ヶ月)間の場合、下記算式で減額されます。

779,300円 × 300ヶ月/480ヶ月 = 487,061円(平成29年度)

この方が受け取れる老齢基礎年金は月額約4万1千円です。

老齢基礎年金の受給資格期間の要件が10年間に短縮されると、保険料納付意欲が下がり、10年間しか保険料を納めない人が増える可能性が指摘されています。仮に10年間しか保険料を納めない場合、月額約1万6千円しか受け取れないので、老後の生活資金としては非常に心許ない金額になります。

 

 

 

5.免除の活用

国民年金に関しては保険料を払えるのに払わない方もいると思いますが、実際に生活が苦しくて保険料を支払えないという方もいらっしゃると思います。

そのような方には是非、免除の申請をして頂きたいと思います。老齢基礎年金の支給要件には、保険料納付済期間だけでなく、保険料免除期間も算入されます。年金額の計算には満額反映されませんが、受給資格期間には参入されますので、ご活用頂きたいと思います。

国民年金の免除について詳しく知りたいという方は、下記記事をご参照ください。
国民年金の未納と免除を比較|未納のデメリットとは?

 

 

 

まとめ

国民年金の保険料支払いが苦しいとう方は是非、免除の申請を行って頂きたいと思います。

免除の申請をしていないと「未納」という状態になります。「未納」だと、上記の通り、老齢基礎年金の支給要件に影響するだけでなく、障害基礎年金、遺族基礎年金の支給にも影響します。

最終更新日:2017年8月13日
No.268