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保険、共済、少額短期保険の違いを比較

「保険と共済は何が違うの?」という質問を頂くことがあります。保険と共済は、ともに生命の保障や事故の補償を行う事業で何が違うのかと疑問を持たれる方も多いと思います。

共済と保険を比較するとどのような違いがあるのか、また、共済保険の種類やメリット・デメリットについて解説します。

更に最近、注目されている少額短期保険(ミニ保険)と保険についても比較し、違いについて解説します。

1.共済とは?

共済」とは、「互いに助け合う」、「お互いにお金を出し合って何かをする」といった意味を持つ言葉で、一般社団法人日本共済協会によると、下記のように定義されています。

共済は、私たちの生活を脅かす様々な危険(死亡や入院、住宅災害、交通事故など)に対して、組合員があらかじめ一定の掛金を拠出して共同の財産を準備し、不測の事故が生じた場合に共済金を支払うことによって、組合員やその家族に生じる経済的な損失を補い、生活の安定をはかる助け合い(相互扶助)のしくみです。

上記の内容を読み、「保険の仕組みと同じでは?」と思われた方もいると思います。保険も多くの人がお金を出し合って、万が一の際に助け合う「相互扶助」の制度ですが、共済と保険を比較すると何が違うのでしょうか。

 

 

 

2.保険と共済の違いとは?

保険と共済を比較すると、違いは下記3点です。

 

1-1.保険は営利事業、共済は非営利事業

保険と共済の違いですが、最大の相違点は、営利事業か非営利事業なのかという点です。保険は営利事業ですが、共済は非営利事業です。

共済は儲けを前提としない非営利事業なので、掛け金が安く、毎年の決算で余剰金が出た場合、割戻金が発生します。つまり、掛け金の一部が返ってきますので、実質の掛金は安くなります。

例えば、都民共済の総合保障型・入院保障型の割戻率(平成27年度)は34.16%です。実質7割程度の掛金で加入できたことになります。

 

1-2.契約の対象の違い

契約の対象は保険と共済で下記の通り異なります。

保険

保険の場合、基本的に誰でも(不特定多数)加入することが可能です。

共済

共済の場合、組合員のみ(地域や職業などの団体の構成員)など特定の方のみ加入が可能です。

 

1-3.事業に関する監督官庁(所管庁)及び根拠法令の違い

監督官庁、根拠法令は保険と共済で下記の通り異なります。

保険

監督官庁:金融庁
根拠法令:保険業法

共済

監督官庁:共済それぞれの所管庁

【例】
JA共済⇒農林水産省
こくみん共済⇒厚生労働省

根拠法令:共済それぞれの根拠法

【例】
JA共済⇒農業協同組合法
こくみん共済⇒消費生活協同組合法

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3.共済保険の種類

共済保険の種類には、「生命共済」「火災共済」「自動車共済」などがあります。

 

生命共済

生命共済は「ひと」に対する共済で、生命保険と同様の内容です。保障の対象者である被共済者に万が一(死亡やケガなど)のことがあれば、共済金が受け取れます。

また、満期共済金年金を受け取る共済商品もあります。就労不能を保障する共済もあります。

例えば、JA共済であれば、終身共済、養老生命共済、定期生命共済、医療共済、がん共済などがあります。生命保険会社と遜色ない商品がそろっています。

 

火災共済

火災共済は「建物や家財」に対する共済で、「建物と建物内に収容されている動産(家財)」に台風などの自然災害、火災などで損害が発生した場合に共済金が受け取れます。火災保険に相当する商品です

 

自動車共済

自動車共済は「くるま」に対する共済で、自動車事故が起きた際の損害賠償、搭乗者の傷害、車両の損害等が保障されます。自動車だけでなく、二輪車も共済の対象にできます。自動車保険やバイク保険に相当する商品です。

 

 

 

3.共済のメリット、デメリットとは?

共済にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。共済のメリット、デメリットは下記の通りです。

 

共済のメリット

上記の通り、共済は保険と違い営利を目的としていないため、掛け金が割安に設定されています。また、決算の結果、余剰が発生した場合には、割り戻し金が契約者に返ってきます。実質的に割戻金の分だけ安い掛金で共済保険に加入できたことになります。

例えば、こくみん共済(全労済)の「割り戻し金一覧(2017年度)」を確認すると、医療共済で21%もの割戻金が発生しています。

ただし、全労済のマイカー共済のように割戻金がない共済保険もあります。すべての共済保険で割戻金が発生するわけではないので、注意が必要です。

掛金の安さで自動車共済への加入を検討しているのであれば、通販型自動車保険などの保険料と比較する方がいいでしょう。

 

共済のデメリット

民間の生命保険に比べると、設定できる保障が小さい場合があります。例えば、都道府県民共済などは、保障額が小さいので、共済だけでは保障が不足してしまう可能性があります。

都道府県民共済は年齢に関係なく一律の掛金ですが、年齢が高くなると、保障額が小さくなるという点にも注意が必要です。
共済と医療保険の違いを比較、どちらがおすすめ?

また、死亡保障と医療保障がパッケージ化されている共済保険もあり、1つの共済保険で死亡保障と医療保障が準備できるメリットがある一方で、保障額や保障内容を自由に選ぶことができないというデメリットが発生します。

 

 

 

4.少額短期保険(ミニ保険)とは?

上記のように根拠法と監督官庁のある共済を「認可共済」といいます。以前は、根拠法と監督官庁のない共済が乱立し、「無認可共済」と呼ばれていました。

しかし、契約者保護を図ることを目的として、2006年(平成18年)4月に改正保険業法が施行され、「少額短期保険業制度」が導入されました。「無認可共済事業者」は、損害保険会社となるか、少額短期保険業者として金融庁に登録するなど、規制が強化されました。

少額短期保険業」とは、保険期間が2年以内(生命保険・医療保険は1年、損害保険は2年)、保険金額が1,000万円以内の短期・少額の保険のみを引き受ける事業です。「ミニ保険」とも呼ばれています。

保険会社では規制されている生命保険と損害保険の兼営が少額短期保険業者には認められている等の違いがあります。

 

少額短期保険業者と保険会社の違い

少額短期保険業者と保険会社の違いをまとめると、下表の通りです。

保険会社 少額短期保険会社
参入要件 免許制 登録制
申請先 金融庁 金融庁・財務局
生損保兼営 生損兼営不可 生損兼営可
取扱商品 制限なし 制限あり
事業規模 制約なし 年間収入保険料50億円以下
資本金 10億円以上 1,000万円以上

 

 

 

まとめ

共済と保険を比べると、保障額や保障内容の設定に関しては、保険の方が自由度が高い商品が多くあります。

共済は割戻金が返ってくるなどのメリットがありますが、デメリットについても確認し、加入を検討して頂ければと思います。

また、少額短期保険業者の中には非常にニッチで面白い分野の商品を扱う会社もあり、注目されています。痴漢を疑われた際に弁護士に電話ができるとして話題になった「痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険」も少額短期保険です。

但し、ご注意頂きたいのが、少額短期保険の保険料は所得税法上の生命保険料控除または損害保険料控除の対象とはなりません。また、少額短期保険業者の保険契約は、「保険契約者保護機構」の補償対象外になっている点も保険会社とは異なります。

最終更新日:2019年4月6日
No.102