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保険金(満期金)の支払いを税務署は知っている!?

先日、養老保険の満期保険金を受け取った場合、どのような税金がかかるのかという質問を頂きました。また、確定申告をする必要があるのかとの質問も同時に頂きました。

確定申告しなければ税務署も保険金を受け取ったことが分からないだろうという趣旨での質問でした。

今回は、満期金に課税される税金と、仮に確定申告しないと、どのようなリスクがあるのかについてご紹介したいと思います。

1.所得税か贈与税

まず、満期保険金を受け取ったらどのような税金が課税されるのかを確認したいと思います。

養老保険等の満期保険金を一時金で受け取った場合、保険料負担者と満期保険金受取人の関係で課税される税金が下記の通り異なります。

保険料負担者 満期保険金受取人 税金
所得税・住民税
贈与税

上記の通り、保険料負担者と受取人が同一人である場合には所得税・住民税、異なる場合には、贈与税が課されます。

保険料負担者(契約者)と受取人が異なる具体例としては、父親が保険料を負担した契約の満期保険金をその子供が受け取った場合には、贈与税が子供に課税されます。

多くの場合、契約者=保険料負担者となりますが、契約者と保険料負担者が異なる場合があります。その場合には、実質的な保険料負担者で課税される税金は判断されます。

一般的には、贈与税が課税される契約形態よりも所得税・住民税が課税される契約形態の方が税負担は小さくなります。

 

 

 

2.一時所得として総合課税

所得税が課税される場合で満期保険金(保険期間が5年超の場合)を一時金で受け取る場合、一時所得として他の所得と合算して総合課税されます。

給与所得等、他の所得との合算額の多寡によって所得税の税率は決まります。

所得税の速算表は下表の通りです。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 975,000円
330万円を超え695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

 

 

 

3.一時所得の計算式

一時所得の計算は下記の通り満期保険金から支払保険料を差し引き更に特別控除額50万円(最高限度)を差し引きます。

①満期保険金
②配当金等
③支払保険料

■一時所得=(①+②)-③-50万円(50万円に満たない場合にはその金額)

つまり、受け取った満期保険金と配当金の合計額から必要経費として支払保険料を引いた額が50万円を超えなければ税金は掛かりません。

課税対象となるのは下記の通り、一時所得を2分の1した金額です。

■課税対象金額=一時所得×1/2

上記計算結果を他の所得と合算して課税されます。また、同一の年内においては、一時所得内の内部通算が可能です。

【内部通算の事例】

契約A
満期保険金:600万円
保険料:400万円
差引:+200万円

契約B
解約返戻金:200万円
保険料:300万円
差引:-100万円

{(600+200)-(400+300)-50}×1/2 = 25万円

※同一年内に契約A、B以外の収入がなかったとして計算

 

 

 

 

4.金融類似商品の場合は源泉分離課税

満期保険金は通常、一時所得として確定申告が必要となりますが、金融類似商品に該当する場合には、例外的に「源泉分離課税」(他の種類の所得とは合算されず、分離して課税)が適用されます。

保険期間が5年以内に満期になる一時払養老保険等や、保険期間5年超でも契約日から5年以内に解約されたものは金融類似商品に該当します。

金融類似商品は、一時所得とは異なり、満期保険金(配当金含む)と払込保険料の差額に対して、20.315%の源泉分離課税となります。

・所得税 15.315% (復興特別所得税を含む)
・住民税 5%

【実際の例】

商品:一時払い養老保険
一時払保険料:100万円
満期保険金:90万円

(100-90)×20.315%=20,315円

源泉分離課税なので、保険会社が税金を差し引き、受取人が979,685円を受け取ることになります。よって受取人が改めて確定申告をする必要はありません。

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5.贈与税が課税される場合

契約者(保険料負担者)と満期保険金受取人が異なる場合には贈与税が課税されます。前述の通り、父親が保険料を負担していた契約の満期保険金を子供が受け取ったというような場合には贈与税が課税されます。

贈与税(暦年課税)は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額(110万円)を差し引きます。仮に、満期保険金以外に贈与が無かったとした場合の贈与税の課税対象額は下記計算式の通りです。

贈与税の課税価格=満期保険金-贈与税の基礎控除額(110万円)

贈与税の税率は基礎控除額を差し引いた後の課税価格によって異なり、下表の通りになります。

基礎控除後の課税価格 税率と控除額
一般 直系卑属※
200万円以下 10% 10%
200万円超 300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
300万円超 400万円以下 20% 25万円
400万円超 600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
600万円超 1,000万円以下 40% 150万円 30% 90万円
1,000万円超 1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
1,500万円超 3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
3,000万円超 4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

※「親・祖父母」から「20歳以上の子・孫」への贈与

 

 

 

6.確定申告の必要性

さて、ここまでで満期保険金に課税される税金をご説明しましたが、満期保険金を受け取ったからといって必ず確定申告が必要となるわけではありません。満期保険金を受け取った場合に確定申告が必要となる方は下記の通りです。

1)満期保険金が贈与税の対象となる方

満期保険金が贈与税の課税対象となる場合、満期保険金と満期保険金以外で受け取った贈与財産を合計し、その合計額が基礎控除(110万円)を超えていれば、贈与税の申告が必要になります。満期保険金を受け取った年の翌年の2月1日から3月15日までに申告と納税が必要です。

2)個人事業主や年間収入が2,000万円超の給与所得者

そもそも確定申告が必要な方です。

3)一般的な給与所得者

1ヶ所から給与等の支払を受けている給与所得者で、その給与等の収入金額が2,000万円以下の場合には、原則として年末調整によって税額の精算が行われるので、確定申告は不要です。しかし、確定申告が不要である給与所得者でも「給与所得及び退職所得以外の所得金額」が20万円を超える場合等は、確定申告が必要になります。

一時所得である満期保険金は、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」に該当します。よって、満期保険金(配当金含む)から支払保険料を差し引き、更に特別控除を差し引いた額(一時所得の金額)を1/2にした金額が20万円を超える場合には、確定申告をする必要があります。

具体的には下記の通りです。

確定申告が不要な場合
満期保険金:600万円
支払保険料:510万円
600 - 510 - 50(特別控除) × 1/2 = 20万円

確定申告が必要な場合
満期保険金:600万円
支払保険料:500万円
600 - 500 - 50(特別控除) × 1/2 = 25万円

 

 

 

 

7.税務署は保険金の受け取りを知っている!

確定申告しなければ、税務署は満期保険金を受け取った事を知らないだろうというのは大きな間違いで、保険会社は保険金や満期保険金を100万円超支払った場合、支払調書を作成し、税務署に提出しています。

生命保険会社は、下記の保険金等を支払う場合には、支払調書を税務署に提出するよう定められています(所得税法第225条、相続税法第59条)。

死亡保険金や満期保険金、解約返戻金の支払額が100万円を超える場合、年金支払額が年20万円を超える場合。また、契約者と年金受取人が異なる場合等は平成25年分から支払金額にかかわらず支払調書が提出されます。

支払調書に記載される事項は、下記のような項目です。
●契約者の住所、氏名
●被保険者の住所、氏名
●受取人の住所、氏名
●保険金額
●払込保険料
●支払年月日
●保険会社の所在地、名称 等

また、2016年1月からのマイナンバー制度導入により支払調書に契約者や受取人のマイナンバー記載が必要になります。
マイナンバーと損害保険、生命保険

≪実際の支払調書≫
生命保険支払調書

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、税務署は支払調書によって(満期)保険金の支払い状況を把握しています。

 

 

 

8.申告しない場合のリスク

保険会社から支払調書が出ていれば税務署は(満期)保険金の受取状況を把握しています。仮に申告せずに税務署に無申告を指摘されれば、無申告加算税が課されます。

無申告加算税は納付すべき税額に対して、下記の金額が加算されます。

50万円までは15%
50万円を超える部分は20%

但し、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、5%に軽減されます。また、期限後申告の場合には延滞税も納付する必要があります。

更に無申告の場合には行政上の無申告加算税、延滞税というペナルティーだけでなく、以下の刑事罰もあります。

●故意に税を免れる意思があり、無申告が見つかった場合には、
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科

●故意に税金を免れる意思がなく、無申告が見つかった場合でも、
1年以下の懲役または50万円以下の罰金

 

 

 

まとめ

(満期)保険金を受け取っても税務署にバレてないから申告する必要はないという考えやバレたら申告すればいいというような考えは、残念ながら通用しません。

うっかり忘れていたという場合でもペナルティーはあります。ムダに追加の税金を支払うことにならないよう申告漏れには十分ご注意頂ければと思います。

最終更新日:2018年1月15日
No.151