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離婚、再婚時の相続で確認すべきポイント7つ

離婚を理由に子供と離れて暮らす方から「疎遠になった子供に相続権はあるのか?」という質問を受けることがあります。

離婚後、ほとんど会ったことがない子供に相続権はあるのでしょうか?再婚して、子供が出来た場合、前妻(前夫)との子供の相続権はなくなるのでしょうか?

離婚、再婚経験者が相続時に注意すべきポイントについて解説します。

1.前妻(夫)との子に相続権はあるのか?

子どもがいる夫婦が離婚すると、夫婦は互いに他人になりますが、親子関係は継続します。例えば、子供がいる夫婦が離婚し、妻が子供を引き取り育てているとして、夫と妻は他人となりますが、夫と子供の親子関係は継続します。

離婚後に結婚し、後妻との間に子供が生まれ、前妻との子とは全く交流がなく、一切の財産を渡すつもりはないという方がいますが、実際には、交流があろうがなかろうが、前妻との子と後妻との子との相続割合は下記事例のように同じです。

【事例】
相続人:後妻、前妻との子A、後妻との子B

上記事例の場合、法定相続分は、下図の通り、「後妻:1/2」、「前妻との子A:1/4」、「後妻との子B:1/4」となります。

前妻の子と後妻との子の相続割合

なお、離婚すれば、前妻に相続権はありません

 

 

 

2.後妻との子供に全財産を渡したい

前妻との子供とは疎遠なので、後妻と後妻との子供に全財産を渡したいという場合もあると思います。遺言で全財産を後妻と後妻との子供に渡すと書けば、解決しそうですが、どうでしょうか?

遺言で全財産を後妻と後妻との子供に渡すと書いたとしても、全財産を渡せない場合があります。その理由は、前妻との子供には遺留分(相続人に保障された最低限の取り分)があるので、前妻との子供に遺留分を請求される可能性があるからです。

ただし、遺留分は遺留分権利者である前妻との子供が請求する必要がありますので、前妻との子供から請求(遺留分減殺請求)がなければ、前妻との子供に遺留分が渡ることはなく、後妻と後妻との子供が全財産を相続することができます。

以下のような相続人がいる場合の法定相続分と遺留分は下図の通りです。

【事例】
相続財産:5,000万円
相続人:後妻、後妻との子B、前妻との子A

前妻の子の遺留分

 

上記事例の場合、仮に夫が全財産を後妻とその子供Bに渡すという遺言書を書いても、前妻との子Aには625万円の遺留分があるので、遺留分減殺請求を起こせば、夫の財産のうち625万円は子Aに渡ります。

遺留分があるのであれば、遺言を書く意味はないのではないかと思われる方もいるかもしれません。

しかし、遺言は重要です。なぜなら遺言がなければ、前妻との子には法定相続分の権利があります。遺言があれば、前妻との子には遺留分までの権利となります。

上記の例で考えると、遺言がない場合には、前妻との子Aには法定相続分である4分の1の権利がありますが、遺言があれば、遺留分である8分の1(1/4×1/2)までの権利となります。

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3.後妻の相続割合は?

後妻の相続割合はどうなるのでしょうか?

離婚後、再婚してすぐに配偶者が亡くなった場合、どんなに婚姻期間が短くても配偶者には、財産の2分の1を相続する権利があります。

例えば、子供がいる方が再婚した下図のようなケースで、婚姻期間が非常に短くても配偶者の法定相続分は2分の1、子供の法定相続分は2分の1となります。

前妻との子と後妻の相続割合

 

 

 

4.連れ子に相続権はあるのか?

例えば、母親に連れ子がいて、再婚をした場合、連れ子は再婚相手の夫の法定相続人になるのでしょうか?

実は、連れ子は新しい父親とは養子縁組などの措置を取らない限り法定相続人にはなりません。再婚相手の連れ子に財産を遺したい場合には、養子縁組の手続きを忘れないようご注意ください。

なお、養子の場合、相続税を計算する際の基礎控除や生命保険の非課税枠(相続税法12条)の法定相続人の数に算入できる人数が実子がいれば1人まで、実子がいない場合には2人までと制限されています。

養子を増やすことによって無制限に相続税を軽減できないようにするための措置ですが、連れ子を養子縁組した場合には、その養子は人数に関係なく、相続税を計算する際の基礎控除や生命保険の非課税枠(相続税法12条)の法定相続人の数に算入できます

 

 

 

5.内縁の妻に相続権はない?

離婚後、新たなパートナーの方と一緒に住んでいるが、色々な事情があって籍を入れていない内縁(事実婚)のご夫婦もいると思います。実は、事実婚の場合、何年一緒に住んでいるとしても、内縁の妻(夫)に相続権はありません

つまり夫(妻)が遺言を書かずに亡くなった場合、妻(夫)は財産を相続することはできません

内縁の妻(夫)に財産を渡したければ、遺言を書く必要があります。または、生命保険の死亡保険金受取人に内縁の妻(夫)を指定することにより、保険金額分の財産を渡すことが出来ます。

ただし、内縁の妻(夫)を受取人にするには、生命保険各社で条件が異なる場合がありますので、注意が必要です。
内縁の妻(夫)に相続権はない?
 

 

6.離婚や再婚した場合の相続対策の必要性

例えば、前妻との間に子供がいて、再婚し、後妻との間にも子供がいる場合、相続時にもめる可能性があります。特に前妻との子と後妻との子に交流がないと、相続でもめる可能性が高くなります。

この場合は、財産が多い少ないは関係ありません。よく、自分は財産が少ないから相続対策をする必要はないという方がいますが、財産が少ないからといって相続問題とは無縁かというと、そんなことはありません。

財産が少ないと相続税とは無縁かもしれませんが、分割問題が発生する可能性があります。100件の相続があったとして、相続税が発生する割合は10%に満たない割合ですが、財産の分割については、相続人が1人でない限り100%必要なわけです。

離婚や再婚されている場合には、遺言や生命保険を活用し、遺産分割でもめないように財産の行先を決めておくといいでしょう。

 

 

 

7.遺言の代用として生命保険を活用

財産を残したい特定の相続人がいるが、遺言を書く気にはなれないという場合、生命保険を活用する方法があります。

生命保険は民法上、受取人固有の財産とされていますので、保険金は遺産分割の対象外となります。

どうしても財産を渡したい方がいるのであれば、その方を受取人とした生命保険契約をすれば、保険金額分の財産を遺すことができます。

生命保険は遺言のように手間や費用はかかりません。

例えば、前妻との子には必ず財産を遺してやりたいというような場合には、生命保険は有効です。遺言の代用として活用して頂くこともできます。

 

 

 

まとめ

離婚や再婚がからむ相続の場合、離婚や再婚をしていない場合の相続に比べて人間関係が複雑になります。

例えば、後妻と前妻との子供、後妻の子供と前妻の子供と交流がない場合、遺産の分割で問題が起こる可能性が高くなるのは明らかです。

離婚や再婚をされている方に関しては、遺言や生命保険を活用し、可能な限りスムーズに遺産分割が行えるよう準備しておくことが肝要でしょう。

No.320