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生命保険会社が破たん(倒産)した場合、保険契約は消滅する?

生命保険や医療保険などは、最低でも10年程度の長い期間契約する商品です。よって、生命保険や医療保険等に加入している期間に契約している生命保険会社が破たんするリスクを心配される方もいらっしゃいます。

生命保険会社が破たん(倒産)した場合、契約している生命保険や医療保険等の契約はどうなるのでしょうか?契約は消滅してしまうのでしょうか?継続できるのでしょうか?

今回は生命保険会社が破たんした場合、契約している生命保険や医療保険がどうなるかと保険会社を選ぶ際の基準についてご紹介します。

1.契約は消滅しない

生命保険会社の経営が破たんしても、加入している生命保険や医療保険等の契約が消滅るすことはありません。生命保険会社が破たんした場合、生命保険契約者保護機構により資金援助等が行われ、一定の契約者保護が図られることになります。

つまり、生命保険等の契約は『生命保険契約者保護機構』によって、公的なセーフティネットが設けられていることになります。

 

 

 

2.生命保険契約者保護機構とは?

では、生命保険契約者保護機構(以下保護機構)とはどのような組織でしょうか?

保護機構は、保険業法に基づいて平成10年(1998年)12月1日に設立・事業開始した法人であり、国内で事業を行う全ての生命保険会社が会員として加入しています。但し、共済・少額短期保険業者・特定保険業者等は保護機構の会員ではありません。
保険、共済、少額短期保険は何が違う?

保護機構の会員である生命保険会社が破綻に陥った場合、保護機構は資金援助等を行い、保険契約者等の保護を図ることにより、生命保険業に対する信頼性を維持することを目的としています。

 

 

 

3.生命保険会社破たん時の対応

破たんした生命保険会社の保険契約の継続を図る仕組みには、救済保険会社が現れた場合と現れなかった場合の2つケースがあります。

1)救済保険会社が現れた場合

「救済保険会社」が現れた場合、保護機構は「救済保険会社」に資金援助を行います。破綻保険会社の保険契約は、「救済保険会社」による保険契約の移転、合併、株式取得により破綻後も保険契約を継続することができます。

 

2)救済保険会社が現れなかった場合

「救済保険会社」が現れない場合、破綻保険会社の保険契約は、保護機構の子会社として設立される承継保険会社に承継される、もしくは「保護機構」自らが引き受けることにより、破綻後も保険契約を継続することができます。

実際の生命保険会社の破たん例は以下の通りです。
・日産生命保険相互会社(1997年4月)
・東邦生命保険相互会社(1996年6月)
・第百生命保険相互会社(2000年5月)
・大正生命保険株式会社(2000年8月)
・千代田生命保険相互会社(2000年10月)
・協栄生命保険株式会社(2000年10月)
・東京生命保険株式会社(2001年3月)
・大和生命保険株式会社(2008年10月)

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4.契約条件の変更

破たんした生命保険会社の契約は保護機構の支援によって消滅することなく継続することが可能ですが、下記のように契約条件が変更される可能性があります。

1)責任準備金の削減

破たん後の契約は継続されますが、責任準備金が削減されることがあります。保護機構により補償されるのは、原則、破たん時の責任準備金の90%までです。
※補償されるのは、責任準備金の90%です。保険金や給付金の90%ではないことに注意が必要です。

責任準備金が削減されると、一般的に契約時に約束されていた死亡保険金額や満期保険金額、年金額が減少するという影響が出ます。

責任準備金とは?
生命保険会社は将来の保険金・年金・給付金等の支払いに備え、収入保険料の一部を積み立てています。この積立金を責任準備金といいます。

 

2)契約条件の変更

責任準備金の削減以外に予定利率等の引下げが行われる可能性があります。

予定利率とは?
生命保険会社が契約者に約束する運用利回りで、その運用利回り分保険料は割り引かれています。

予定利率が引き下げられると、一般的に契約時に約束されていた死亡保険金額や満期保険金額、年金額が減少するという影響が出ます。

予定利率は、標準利率をもとに保険会社が決定するもので、予定利率が高いほど保険料は安くなります。予定利率以外にも予定死亡率や予定事業費率などにより保険料は左右されます。
生命保険の保険料はどのように計算されている?

 

3)早期解約控除(解約返戻金の削減)

保険契約の引継ぎ後一定期間内に解約をすると、解約返戻金が削減される(早期解約控除)ことがあります。この措置は、契約を引き継ぐ保険会社が、一定の保険契約者数を維持し、円滑に保険契約を継続させていくためのものです。

 

 

 

5.契約条件の変更による影響は?

責任準備金の削減や予定利率の引下げは、契約者にとって不利になります。実際に責任準備金や予定利率の変更があった場合の影響の大小を保険種類別に確認してみたいと思います。

1)定期保険

保障性の高い(掛け捨て)定期保険は、保険金額の減少幅は小さく、影響は小さいといえます。

2)医療保険

医療保険についても定期保険と同様に保障性が高い商品ですので、影響は小さくなります。

3)終身保険等

終身保険や養老保険、個人年金保険等の貯蓄性の高い商品については、影響が大きく、保険金額の減少幅も大きくなります。また、満期までの期間が長い契約ほど大きな影響を受けます。

尚、貯蓄性の高い商品については、契約時期でも影響が異なり、予定利率が高い時期に加入した契約ほど影響が大きくなります。

 

 

 

6.保険会社の健全性指標

上記の通り、生命保険会社が破たんしても契約が消滅することはありませんが、契約者にとって責任準備金の変更等、不利益な条件変更が行われる可能性があります。よって、破たんする可能性の低い保険会社を選ぶことも重要となります。

では、保険会社の経営状態を判断する材料はあるのでしょうか?

保険会社の経営状態を判断する指標は、ソルベンシーマージン比率や格付け等があります。

1)ソルベンジーマージン比率とは?

ソルベンシーマージン比率とは、保険会社の財務健全性を示す指標です。

大災害や株の暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる支払余力をどれだけ有しているかを判断する行政監督上の指標のひとつです。

ソルベンシーマージン比率が大きいほど支払余力があると判断できます。200%を下回ると監督当局によって早期に経営の健全性の回復を図るための措置がとられます。

ソルベンシーマージン比率の例
アフラック:848.2%(2016年3月末)
ソニー生命:2,722.8%(2015年3月末)
オリックス生命:1,777.9%(2016年9月末)
大陽生命:982.8%(2016年9月末)

2)格付け

ソルベンジーマージン比率の他にも保険会社の経営状態を判断するための指標として格付けがあります。

格付けとは、格付け会社による独自の調査に基づいて発表されたもので、企業の債務履行能力を評価し、指標 として示したものです。代表的な格付機関には米国のスタンダード&プアーズ(S&P社)やムーディーズ等があります。

例えば、スタンダード&プアーズ(S&P社)では、最上位の格付けは「AAA」で、「BB」以下になると投機的と判断されます。

格付けの例(スタンダード&プアーズ(S&P))
アフラック:A+(2016年5月26日現在)
ソニー生命:A+(2017年1月12日現在)
オリックス生命:A- (2016年11月25日現在)
大陽生命:A(2016年11月11日現在)

保険会社のHPにソルベンシーマージン比率や格付けは掲載されていますので、誰でも確認することが可能です。

 

 

 

まとめ

先述の通り、生命保険会社が破たんした際に補償されるのは、責任準備金の90%で、保険金や給付金の90%ではないことに注意が必要です。つまり、条件によっては、破たん前に契約している保険金額より10%以上、削減される可能性もあります。

生命保険等を契約した保険会社の破たんを避けるためにも各種経営指標を確認し、保険会社の健全性も判断しながら保険商品選びをして頂ければと思います。

 

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