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解約返戻金を受け取ると税金がかかる?確定申告が必要?

終身保険等の掛け捨てではない生命保険を解約すると、解約返戻金が受け取れます。生命保険の解約返戻金を受け取った場合にはどのような税金が課税されるのかというご質問を頂きました。

解約返戻金を受け取った場合、「必ず税金が課税されるのか?」また、「税金が課税されない場合もあるのか?」と気になる方が多いと思います。更に税金が課税されるのであれば、どのような税金がどの程度課税されるのか、確定申告が必要なのかが一番知りたいところではないでしょうか。

今回は、生命保険の解約返戻金に課税される税金、確定申告の必要性について解説します。

1.解約返戻金とは?

解約返戻金とは、生命保健契約を解約した際に戻ってくるお金のことです。終身保険や養老保険等の解約返戻金が発生する商品を解約した際に契約者に払い戻されます。

解約返戻金は、常に支払った保険料に対して100%を超えて払い戻されるわけではありません。特に契約当初から一定期間は、解約返戻金は払い込んだ保険料を割り込みます。

一般的に保険料負担者と解約返戻金の受取人が同じであれば、支払った保険料に対して、受け取る解約返戻金が多い場合(払込保険料総額<解約返戻金(配当金含む))に税金が課税される可能性があります。

逆に支払った保険料に対して受け取る解約返戻金が少ない場合(払込保険料総額>解約返戻金(配当金含む))には、税金が課税されることはありません。よって確定申告も不要です。

 

 

 

2.解約返戻金に課税される税金は?

解約返戻金を一時金で受け取る場合に課税される税金は、契約者(保険料負担者)と解約返戻金の受取人の関係で異なります。

 

1)契約者=受取人の場合(一時所得)

契約者(保険料負担者)と解約返戻金の受取人が同一の場合には、一時所得として所得税・住民税が課税されます。課税対象となる金額は以下の通りです。

(解約時受取総額-払込保険料総額-特別控除額)×1/2

仮に、下記契約例の場合の課税対象額は、以下の通りになります。

【契約例】
払込保険料総額:900万円
解約時受取総額:1,150万円

(1,150万円-900万円-50万円)×1/2=100万円

上記契約例の場合であれば、課税対象の100万円が他の所得と合算されて、所得税・住民税が課税されます。

特別控除額が50万円あるので、解約返戻金(配当金含む)と払込保険料総額の差額が50万円を超えなければ、税金はかかりません。

 

2)契約者≠受取人(贈与税)

契約者(保険料負担者)と解約返戻金の受取人が異なる場合には、贈与税が課税されます。課税対象となる金額は下記の通りです。

解約時受取総額-贈与税の基礎控除額(110万円)

仮に、下記契約例の場合の課税対象額は、以下の通りになります。

【契約例】
払込保険料総額:900万円
解約時受取総額:1,150万円

1,150万円-110万円=1,040万円

1,040万円が課税対象となり、下表の税率で贈与税が課税されます。

基礎控除後の課税価格 税率と控除額
一般 直系卑属※
200万円以下 10% 10%
200万円超 300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
300万円超 400万円以下 20% 25万円
400万円超 600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
600万円超 1,000万円以下 40% 150万円 30% 90万円
1,000万円超 1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
1,500万円超 3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
3,000万円超 4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

※「親・祖父母」から「20歳以上の子・孫」への贈与

上記契約例の場合、一般の場合の贈与税は293万円、直系卑属の場合の贈与税は226万円になります。

 

3)金融類似商品の場合

契約者と解約返戻金の受取人が同じでも、契約の商品が「金融類似商品」に該当する場合の解約返戻金は「源泉分離課税」(他の所得と分離して課税され、源泉徴収される課税方式)となります。

金融類似商品の場合、解約返戻金の受取金額(配当金を含む)と払込保険料との差益に対して、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。

保険会社が税金分を源泉徴収(予め税金を差し引く)し、残りの金額を受取人に支払いますので、改めて確定申告をする必要はありません。

なお、「保険期間」「払込方法」「保障倍率」について、以下の条件全てを満たす商品が金融類似商品となります。

保険期間
5年以下(保険期間が5年を超える契約で、契約日から5年以内に解約された場合を含む)であること。

払込方法
保険料を一時払いする契約であること。または以下のいずれかに該当する契約であること。
・契約日から1年以内に保険料総額の1/2以上を支払う方法
・契約日から2年以内に保険料総額の3/4以上を支払う方法

保障倍率
「普通死亡保険金額」が満期保険金額以下かつ「災害保険金額」が満期保険金額の5倍未満
※災害保険金額=災害死亡保険金額+災害疾病入院日額×入院限度日数

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3.税務署に支払調書が提出される

生命保険会社は、下記の保険金等を支払う場合には、支払調書を税務署に提出するよう定められています。(所得税法第225条、相続税法第59条)

死亡保険金や満期保険金、解約返戻金の支払が100万円を超える場合、年金支払額が年20万円を超える場合、また、契約者と年金受取人が異なる場合等は平成25年分から支払金額にかかわらず支払調書が提出されます。

つまり、100万円を超える解約返戻金を受け取った場合等には、保険会社から税務署に支払調書が提出されているので、特に税金の申告漏れがないようにお気を付けください。
保険金(満期金)の支払いを税務署は知っている!?

 

 

 

4.税務署への確定申告は必要か?

解約返戻金を受け取った場合に税務署への確定申告が必要か不要かをまとめると以下の通りです。
 

一時所得に該当する場合

一時所得として所得税・住民税の課税対象となるケースでは、差益(解約返戻金(配当金を含む)-払込保険料総額)が特別控除の50万円を超える場合に確定申告が必要となります。

ただし、年間収入金額が2,000万円以下のサラリーマン(給与所得者)の場合、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」が20万円以下であれば、確定申告は不要となります。

よって差益(解約返戻金(配当金を含む)-払込保険料総額)から特別控除(50万円)を引いた額の1/2の額が20万円以下であれば、確定申告は不要で、税金もかかりません。

解約返戻金が一時所得となるケースでは、税金が課税されることは少ないでしょう。
 

贈与税の課税対象の場合

贈与税の課税対象となるケースでは、受け取る解約返戻金(配当金を含む)が基礎控除の110万円を超える場合に確定申告が必要となります。
 

金融類似商品の場合

金融類似商品の場合、解約返戻金の受取額(配当金を含む)と払込保険料との差益に対して20.315%の税金が源泉徴収されます。保険会社から解約返戻金を支払う際に予め税金分を差し引いて受取人に支払いますので、改めて確定申告をする必要はありません。

 

 

 

5.生命保健は預貯金と比べて有利?

生命保険を貯蓄の代替として活用すると、一時所得となる場合、税金面では、預貯金に比べて有利になります。

預貯金の場合は、利子に対して源泉分離課税で20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税金が掛かりますが、生命保険の場合には、上述の通り、解約返戻金と払込保険料の差額が50万円を超えない限り、税金はかかりません。

更に50万円を超えても他の所得と合算する際に1/2されるので、所得税の税率によっては、預貯金よりも有利になります。

また、生命保険には生命保険料控除がありますので、その点でも所得税、住民税が軽減され、税金面では、預貯金よりも有利になります。
生命保険料控除とは?|確定申告や年末調整時の控除申告書の書き方

 

 

 

6.生命保険を使って貯蓄する場合のデメリット

税金面では預貯金より有利ですが、生命保険には、契約後一定期間、解約返戻金が払込保険料を割り込むというデメリットがあります。

預貯金の場合であれば、いつ引き出しても元本割れすることはありません。しかし、生命保険の場合は、途中解約すると解約返戻金が払込保険料を割り込む可能性が高くなります。

特に保険料払込期間中の解約返戻金を低く抑えている低解約返戻金型の終身保険の場合には、低解約期間に途中解約すると下記契約事例のように解約返戻金が払込保険料を大きく割り込むことになりますので、ご注意ください。
終身保険(低解約返戻金型)加入時に確認すべきポイント

【契約例】
商品:終身保険(低解約返戻金型)
被保険者:30歳男性
保険金額:500万円
保険料払込期間:10年
月額保険料28,475円

解約払戻金推移表

経過
年数
年齢 保険料累計(円) 解約返戻金(円) 返戻率
1年 31歳 341,700 178,155 52.1%
2年 32歳 683,400 406,440 59.4%
3年 33歳 1,025,100 637,685 62.2%
4年 34歳 1,366,800 871,925 63.7%
5年 35歳 1,708,500 1,109,225 64.9%
6年 36歳 2,050,200 1,349,585 65.8%
7年 37歳 2,391,900 1,593,070 66.6%
8年 38歳 2,733,600 1,839,735 67.3%
9年 39歳 3,075,300 2,089,650 67.9%
10年 40歳 3,417,000 2,342,890 68.5%
11年 41歳 3,417,000 3,378,260 98.8%
12年 42歳 3,417,000 3,409,760 99.7%
13年 43歳 3,417,000 3,441,455 100.7%
14年 44歳 3,417,000 3,473,335 101.6%

上記契約例の商品は、保険料払込期間中は解約返戻金が低解約返戻金型ではない商品の7割程度に抑えられているので、例えば、契約後5年経過時に解約した場合には、払込んだ保険料の約65%しか解約返戻金が受け取れず、大きく元本割れすることになります。

 

 

 

まとめ

解約返戻金に課税される税金についてご理解いただけたでしょうか?

解約返戻金を受け取ったからといって必ず税金がかかり、確定申告が必要となるわけではありません。解約返戻金を受け取った場合には、確定申告が必要かを確認する必要があります。

なお、保険会社が解約返戻金を支払った場合、一定の条件で支払調書が税務署に提出されています。支払調書が提出されているケースでは、税務署は解約返戻金の受け取りを把握していますので、申告忘れ(もれ)がないようにご注意ください。

最終更新日:2018年4月11日
No.262