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政府保障事業とは?|ひき逃げや無保険車との事故が保障される?

自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)のデータ上、全国で300万台以上が車検切れ車両とされているそうです。その多くは廃棄された車両とみられているそうですが、実際に街頭検査で発見される車検切れの車両もあり、10万台~20万台前後が車検切れのまま道路を走っているとのことです。

車検が切れているということは、自賠責保険(共済)にも加入していない可能性が非常に高いと思われます。自賠責保険(共済)に加入していない場合は、任意保険(自動車保険)に加入していることもないでしょう。

そのような車が街の中を走っていると考えると恐ろしい話です。仮に無保険車による事故の場合、被害者の損害は一切保障されないのでしょうか?

実は、ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済のための政府保障事業があります。今回は、政府保障事業についてご紹介します。

1.政府保障事業とは?

政府保障事業は、ひき逃げ事故や無保険(共済)の自動車、泥棒運転(盗難車)による事故により、自賠責保険または自賠責共済からの保険金の支払いを受けられない被害者を救済するための制度です。

国土交通省HPより抜粋~
政府保障事業は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険(共済)の対象とならない「ひき逃げ事故」や「無保険(共済)事故」にあわれた被害者に対し、健康保険や労災保険等の他の社会保険の給付(他法令給付)や本来の損害賠償責任者の支払によっても、なお被害者に損害が残る場合に、最終的な救済措置として、法定限度額の範囲内で、政府(国土交通省)がその損害をてん補する制度です。

 

 

 

2.政府保障事業の保障内容とは?

政府保障事業によるてん補金は、自賠責保険(共済)の支払基準に準じて支払われます。

支払対象 支払限度額
傷害事故 治療関係費、文書料、
休業損害、慰謝料
限度額:120万円
後遺障害を
残した事故
逸失利益、慰謝料等 ◆神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への
著しい障害で、介護を要する傷害
・常時介護の場合:4,000万円
・随時介護の場合:3,000万円◆上記以外の後遺障害
第1級:3,000万円~第14級:75万円
死亡事故 葬儀費、逸失利益、慰謝料 限度額:3,000万円

自賠責保険の詳細については下記記事をご参照ください。
自賠責保険とは?|請求方法・保険料・補償内容などを解説
自賠責保険に加入していないと発生する4つの問題点

 

 

 

3.政府保障事業と自賠責保険(共済)との相違点

上述の通り、保障内容は自賠責保険(共済)と同様ですが、次のような点が自賠責保険(共済)とは異なります。

  1. 請求できるのは被害者のみです。加害者からは請求できません。
  2. 健康保険、労災保険などの社会保険からの給付を受けるべき場合、その金額は差し引いててん補されます。
  3. 被害者へのてん補額については、政府がその支払金額を限度として、加害者(損害賠償責任者)に求償します。

交通事故の場合、健康保険や労災保険は使えない!?』でご紹介した通り、交通事故でも健康保険(公的医療保険)労災保険(労働者災害補償保険制度)を使用することが可能です。

仕事中や通勤・退勤中に交通事故に遭えば労災保険が使用でき、プライベートで外出中等に交通事故に遭えば健康保険(公的医療保険)が使用できます。病院によっては、「交通事故には健康保険は使えません」と言うことがありますが、決してそんなことはありません。

健康保険(公的医療保険)や労災保険を使用しないと、上記の通り、ケガをした方にとってデメリットが発生する可能性がありますので、ご注意ください。

特に無保険車との事故やひき逃げの事故については、必ず健康保険や労災保険を使用するようにしてください。健康保険や労災保険を使用していないと、政府保障事業の保障限度額を治療費が超えてしまった場合、被害者が治療費の全額を負担することになってしまいます。

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4.政府保障事業と人身傷害保険の関係

ひき逃げや無保険車との事故でケガなどをした場合、被害者が加入している自動車保険の人身傷害保険で補償が受けられる場合があります。

ひき逃げや無保険車との事故でケガなどをした場合、政府保障事業と人身傷害保険のどちらを優先的に請求するかは、被害者(請求者)の自由です。ただし、両方から重複して支払いを受けることはできません

政府保障事業では、人身傷害補償保険の保険金については被害者の損害額から控除され、二重支払は受けられません。また、人身傷害保険でも政府保障事業からの保障を受けた場合には、その額が控除され、二重支払は受けられません。

人身傷害保険の補償内容等の詳細については、下記記事をご参照ください。
人身傷害保険とは?押さえておくべき6つのポイント

 

 

 

5.政府保障事業の請求に必要な書類

政府保障事業の請求に必要な書類は以下の通りです。

  • 自動車損害賠償保障事業への損害のてん補請求書
  • 振込依頼書
  • 委任状(保障事業所定の様式)
  • 請求者本人の印鑑登録証明書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 通院交通費明細書
  • 休業損害証明書 など

上記必要書類のうち、「自動車損害賠償保障事業への損害のてん補請求書」等は損害保険会社(組合)の窓口に備え付けてあります。

 

 

 

6.政府保障事業の請求窓口

政府保障事業の請求窓口は下記損害保険会社(組合)です。代理店では受け付けていませんので、ご注意ください。

  • あいおいニッセイ同和損害保険(株)
  • 日新火災海上保険(株)
  • 朝日火災海上保険(株)
  • AIG損害保険(株)
  • Chubb損害保険(株)
  • 三井住友海上火災保険(株)
  • 共栄火災海上保険(株)
  • 明治安田損害保険(株)
  • セコム損害保険(株)
  • セゾン自動車火災保険(株)
  • 損害保険ジャパン日本興亜損害保険(株)
  • 大同火災海上保険(株)
  • 東京海上日動火災保険(株)
  • 全国共済農業協同組合連合会
  • 全国自動車共済協同組合連合会
  • 全国トラック交通共済協同組合連合会
  • 全国労働者共済生活協同組合連合会

(平成30年1月1日現在)

 

 

 

7.政府保障事業の時効

政府保障事業の請求には時効があり、以下の期間が経過すると、時効により請求権は消滅します。

 

◆平成22年3月31日以前に発生した事故の時効

傷害:事故発生日から2年
後遺障害:症状固定日から2年
死亡:死亡日から2年

 

◆平成22年4月1日以降に発生した事故の時効

傷害:事故発生日から3年
後遺障害:症状固定日から3年
死亡:死亡日から3年

 

 

 

まとめ

政府保障事業は自賠責基準での支払いとなりますので、対人のみの保障となります。つまり、ケガや後遺障害等は保障対象ですが、車や自宅建物等の対物損害(物損)は保障対象外です。

また、上記の通り、政府保障事業の請求には時効がありますので、ご注意ください。

損害保険料率算出機構が、政府保障事業の請求方法や請求に必要な書類などをまとめた冊子もありますので、参考にして頂ければと思います。
政府の補償事業のご案内(PDF)

最終更新日:2018年12月16日
No.93