自動運転になると自動車保険は不要になる?

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2016年8月に日産自動車が国内自動車メーカーとして初めて、自動運転技術を搭載した自動車を発売したことをご存知でしょうか。

自動車メーカーだけでなく、Googleなども開発を進めていて注目が集まる自動運転技術ですが、「自動運転技術が実用化されると事故の責任は誰にあるのでしょうか?」や「自動運転になると自動車保険は不要になるのでしょうか?」というご質問をよく頂きます。

今回は、自動運転と自動車保険の関係について考えてみたいと思います。



1.日産の自動運転技術

日産自動車は国内自動車メーカーとして初めて、自動運転技術を搭載した新型「セレナ」を2016年8月下旬に発売しました。

「自動運転技術」とはいうものの日産自動車の坂本副社長は「自動運転の意味は運転支援技術であり、全ての状況をカバーできるわけではない」としています。しかし、「ドライバーの不注意や操作ミスで起きる事故の防止に大きく貢献できる」とメリットも強調しました。

日産が開発した自動運転技術「プロパイロット」は高速道路の単一車線において、ハンドル、アクセル、ブレーキを自動制御し時速30~100キロの範囲内で前方を走行する車との車間距離を保つものです。

渋滞時を含めてハンドル、アクセル、ブレーキ操作の全てを自動にする技術は国内では初となりますが、独メルセデス・ベンツ等では同等の機能を既に実用化しています。

日産は今後、2018年に高速道路の複数車線、2020年に市街地の走行が可能な自動運転技術を市場投入する計画のようです。いずれも事故時の責任はドライバーにあるという前提で開発が進められます。


 

 

 

2.自動運転で自動車保険は不要になる?

さて、上記のような自動運転技術が開発されると自動車保険は不要になるのでしょうか?自動運転は下表の通り4つのレベルに分類されています。それぞれのレベルの事故時の責任者は下表の通りになっています。

自動運転
レベル
概要 具体例 責任者
レベル1 アクセル、ブレーキ、
ハンドル操作のいず
れかをシステムが行う
自動ブレーキ、
車間距離の維持
ドライバー
レベル2 複数の操作を同時に
システムが行う
自動追い越し、
自動合流
レベル3 全ての操作をシステム
が行い、緊急時にドライ
バーが対応する
システム
(自動走行
モード中)
レベル4 ドライバーが全く関与し
ない完全な自動運転
無人運転 システム
レベル1は、現在既に市販化されている自動ブレーキシステムのような運転支援システムを搭載した車です。これが、レベル4になるとアクセル(加速)・ハンドル(操舵)・ブレーキ(制動)を全てシステムが行う完全自動運転になります。

前述の通り、日産の自動運転技術は、事故時の責任をドライバーにあるとして開発されています。2020年に市街地での走行が可能な自動運転技術が開発されても自動車保険は必要であるということになります。

国は2020年までにレベル3、2025年までにレベル4の自動運転技術の市場化を目標としています。

実際、どのレベルになると自動車保険は不要になると考えられるのでしょうか。日本損害保険協会が2016年6月に公表した「自動運転の法的課題について」によると、レベル2、3の自動運転については、現行法に基づく損害賠償責任の考え方が適用可能としています。よって、レベル3までについては、自動車保険は必要と考えられます。

一方、レベル4の自動運転については、従来の自動車とは全く別のものととらえ、自動車の安全基準、利用者の義務、免許制度、刑事責任のあり方など自動車関連の法令等を抜本的に見直したうえでの議論が必要としています。

今後の自動運転技術のレベルが上がり、レベル4まで到達すれば、自動車保険が不要という日がくる可能性がありますが、今後は事故が起きた際に誰に責任があるのかを明確にする必要があります。


 

 

 

3.安全装置割引

自動車保険が不要になるかについては、今後議論が必要となりますが、その前に自動車保険が安くなる可能性はあります。現在はほとんどなくなってしまった安全装置割引ですが、自動ブレーキに関しての割引が導入される予定です。
自動車保険の安全装置割引き

仮に、日産の自動運転技術「プロパイロット」のようなシステムが普及し、事故の軽減に寄与することが実証されれば、更に割引率の高い自動運転技術割引のような割引が導入される可能性があります。自動運転技術が搭載された自動車を所有している場合は、事故の可能性が下がるでしょうから、その分、保険料も安くなる可能性があります。

但し、自動車運転の車が普及すると、自動運転技術に必要になる各種センサーが自動車のバンパー等に設置され、事故を起こした際の修理費が高額になることが予想されます。自動運転車とそうでない車が混在している間は、事故件数は減少してもゼロにはなりません。事故件数が減少しても事故1件あたりの保険金支払額が高額になるでしょう。そうなると、自動車保険全体が高くなる可能性があるので、自動運転技術割引が導入されても現状に比べて保険料が大きく下がらない可能性もあります。

現状でも自動車は高性能化し、事故の際の修理費は高くなっています。実際、東京海上日動は、2015年10月の自動車保険改定で、「対物事故の保険金支払件数は減少したが、1件あたりの保険金支払額が増え、全体として、対物賠償責任保険の支払保険金が増加した」という理由で、対物賠償責任保険の保険料を引き上げました。


 

 

 

4.当分の間、自動車保険は必要

自動車保険が完全に不要になる日が来るかは今後の議論によると思いますが、車の運転は目的地に着くまでの手段であると考える人がいる一方、車の運転自体が目的という人もいます。

自動運転車が市場化されてもマニュアルモードがあり、運転者自ら運転することが可能な場合には、自動車保険は不要にはならず、必要でしょう。

自動運転以外の車が走行禁止にならない限り、完全に自動車保険が不要という状況にはならないと思います。自動運転以外の車は一切走行していないという時代が来るのはまだ先の話ではないでしょうか。そう考えると自動車保険は当分の間必要とされる商品だと思います。


 

 

 

まとめ

レベル4の自動運転技術が市販化されても当分の間は自動運転車とそうでない車が混在することになります。その段階では、事故の件数は減少しても全くなくなることはありません。

全ての車が自動運転になれば、劇的に事故の件数は減るでしょう。その時に自動車保険が必要か不要かの結論はまだ出ていませんが、今後の自動運転技術の進歩とともに自動車保険の契約形態は大きく変わっていく可能性が非常に高いと思います。


 

No.267

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2017年2月20日 | カテゴリー : 自動車保険 | 投稿者 : 保険FP